2015年2月28日土曜日

アタッチメントNO.15

玉井邦夫 著「学校現場で役立つ 子ども虐待対応の手引き」(明石書店)「第2部 虐待を防止するための方法 第6章 子どもへの対応」に、虐待を受けた子どもへの具体的な関わりについて書かれています。

前回は子どもの「自己表出を促す手立て」として、「感情爆発への対応」について紹介しました。今回は、「セルフコントロールの回復に向けて」として、子どもがセルフコントロールを行うために必要なことを紹介します。

セルフコントロールを行うためには、自分の内的な状態に対する自覚が必要であり、その自覚は、何らかの形で言語化されていなければならない。言語化できない感情は統制できない。前回、感情や行動の暴発のあとでも、教師が子どもの内的状態を言語化することが大切であると述べたのは、こうした関わりがセルフコントロールをつけていくための土台となるからである。

子どもの年齢が幼かったり、言語発達の問題があったりして、言語化が困難である場合は、絵を描いたり、体を動かしたりするなど、社会的に許容されうる行動に置き換えていく指導が必要である。

2015年2月26日木曜日

3月学習会の案内 ゲストは新坂英伸さん(宮崎日日新聞)

「宮崎県内で深刻化する子どもの貧困の実態を掘り起こし、課題や展望を探った「だれも知らない~みやざき子どもの貧困」(Miyanichi e-press)」が出版されました。先日立ち寄った書店にも平積みされていました。

3月7日の学習会では、ゲストとして、宮崎日日新聞の新坂英伸さんをお呼びして議論に参加していただきます。新坂英伸さんは、子どもの貧困に関する連載「誰も知らない〜みやざき子どもの貧困」を担当された方です。

この学習会は、校種を問わず、宮崎県内の教職員とSSW(スクールソーシャルワーカー)で作っている会なので、教職員かSSWの方ならどなたでも参加できます。お気軽に参加してください。お待ちしております。

2015年2月23日月曜日

アタッチメントNO.14

玉井邦夫 著「学校現場で役立つ 子ども虐待対応の手引き」(明石書店)「第2部 虐待を防止するための方法 第6章 子どもへの対応」に、虐待を受けた子どもへの具体的な関わりについて書かれていますので、紹介します。

前回は子どもの「自己表出を促す手立て」として、子どもの言動のメカニズムを理解することについて書きました。今回もその続きで「感情爆発への対応」について紹介します。

子どもに適切な感情表出を獲得させるためには、子どもが起こす感情爆発を受け止め、その子の中で生じていたであろう感情を言葉にして返していくことが必要である。

前回も紹介しましたが、「受け止めるというのは子どもの意のままにさせる」ということではありません。

続けます。
「感情を言葉にして返していく」ときに、「『問題性』と『人間性』を分離して考えるという発想が欠かせない。虐待を受けることで、子どもには「問題行動を起こさせてしまう心理機制」が形成される。大人はこうした「問題性」=「問題につながる心理機制」を扱うことになるが、ともすると子どもの「人間性」そのものを否定してしまうことになりかねない。「悪い行為をした」という指摘が「お前は悪い人間だ」という指摘になってしまうのである。

「子どもがもった何らかの感情や欲求」そのものが悪いのではなく、その表出の仕方が悪いのである。だから、子どもと大人が力を合わせて「悪い表出の仕方」を生み出す心理機制に対処する、という図式を作ることが必要である。
言葉掛け例:「○○に〜と言われたことで急に腹を立てたように見えた」

2015年2月22日日曜日

アタッチメントNO.13

今回も、玉井邦夫 著「学校現場で役立つ 子ども虐待対応の手引き」(明石書店)
「第2部 虐待を防止するための方法 第6章 子どもへの対応」に、虐待を受けた子どもへの具体的な関わりについて書かれていますので、紹介します。

前回述べた「リミットテスティング」への対応について、次のように書かれています。
 子どもの言動のメカニズムを理解することが重要である。虐待を受けた子どもの場合、他の子どもにはなんでもないようなことを脅威に感じてしまい、安全感を奪われてさまざまな不適応行動が現れることも考えられる。その場合、教師としては、「こんなことぐらいでどうして」と考えてしまうのではなく、「こういう刺激にこんな反応をするのか」と理解していくことが大切である。
 
 学校を含めて子どもが生活する場は社会的な場面であるから、無制限の自由などは誰にも与えられていない。虐待を受けてきた子どもへの対応でも、行動制約は必要。
「受容的態度」ということが言われるが、「受容とは放任のことではない。(略)その行為に至るまでの子どもの感情は認めるべきである。しかし、行為の不適切さにはリアリティをもって臨む」必要がある。

 その子どもに求める最低限度の社会規範は、子どもの能力や心理的・行動的回復の度合いによっても異なるが、基本線としては、「自己への危害」「他者への危害」「器物の意図的な破壊」は制止されるべきである。これは、個別空間であっても同じである。

 「絶対に叱らない」という対応は不可能である。ただし、「叱る」とは懲罰を与えることではない。どうしても許容されない言動は制止しなければならない、ということである。ルールを明確に提示することの方が子どもの行動の安定は図られる。

 制止する場合、子どもの言動の背後にある心性を理解していることが重要である。社会的な基準から見て許されないのは行為であって、その行為に結びついてしまった感情は認めることが必要である。感情を、社会的に許される形で表出させることにつなげていくことが教育の仕事である。言葉かけ例:「そうやって、うんと叱られたらいつものことだって安心できるのかな。でも、別のやり方もあるよ。」

2015年2月15日日曜日

アタッチメント NO.12

今回も、玉井邦夫 著「学校現場で役立つ 子ども虐待対応の手引き」(明石書店)
「第2部 虐待を防止するための方法 第6章 子どもへの対応」に、虐待を受けた子どもへの具体的な関わりについて書かれていますので、紹介します。
 
「安心感と安全感」をもたせるための手立てとして紹介されている項目を挙げます。
 ○ 注目をあたえること  ○ 感情を汲み取った言語化  ○ 行動化に先回りした言語指示  ○ 肯定形の目標設定  ○ リミットテスティングの理解

それぞれについて、簡単に説明します。
○ 注目をあたえること
   子どもが、当たり前のことをことを当たり前にできているときに、そのことをきちんと認める。これには、子どもの行動に注目することで、子どもの行動を望ましい方向に誘導しようという狙いがあります。「問題行動」の多い子どもに対しては、「問題行動」にばかり大人が注目してしまいます。大人が「また何かしでかすのではないか」という姿勢が強まれば、子どもはそうした大人の気持ちを感じ取り、かえって失敗への不安を強めてしまう。また、登下校の場面や休み時間などに何気なく声をかけることで、子どもに「自分が受け入れられているし気にかけてもらえているという感覚をもたせる」ことも大切である。


○ 感情を汲み取った言語化
   子どもが示す言語の背後にあると思われる感情について、「汲み取った内容を言語化「わざと起こらせているみたいに見えるから怒らないよ」等)して伝えることは、子どもが理解してもらえているという感覚を獲得していく上で重要である。
  
○ 行動化に先回りした言語指示 
   子どもにこれから起こりうるかもしれない事態に対する予測のための手がかりを与えるために、「今度の時間は体育だけど、この前も途中でイライラしてトラブルになったよね。今日、授業中にイライラしたらどうする?」のような「予測の恐言葉かけ」を続ける。これによって「イライラしたら職員室にくる」といった行動を子どもがとれるようになれば、それは大きな前進です。
また、大人が、「今のあなたはこういう感情状態のように見える」「あなたの言い方を聴いていると、〜の気持ちのように聞こえる」といった言葉を重ねることで、内省への手がかりを提示することができる。

○ 肯定形の目標設定 
   子どもが学校生活の中でトラブルを起こしたとき、「今度〜になったら〜してみよう」という肯定形の目標を設定する。肯定形の目標設定は、たとえそれが失敗しても、「その方法ではだめだったから次を考える」という「前進感」をもたせることができる。これが成功の可能性を信じてもらえるという思いにつながり、学校生活に対する安心感や安全感に結びつくと考えられる。
 
○ リミットテスティングの理解
   子どもが学校生活のなかで、「どこまでやったら『慣れ親しんだ』虐待的な関係が出てくるのか」と確かめようとする行動傾向のことであり、子どもが教員との間に一定の信頼関係を築き始めたころに示される行動である。具体的には、ひどく挑発的で、叱責されることを求めているかのように感じられる言動である。
 対応は、次回紹介します。
   

2015年2月9日月曜日

3月学習会の案内

3月の学習会の会場が決定しましたので、改めて案内します。

日時 3月7日(土)9:30 〜 11:30
会場 コーヒーHAMASAKI  住所 宮崎市柳丸町153-1 パティオ柳丸C1-7

今回の会場は、オーナーのご厚意で、「コーヒーHAMASAKI」にて
開催させていただきます。

自家焙煎のおいしいコーヒーを飲みながら、お話ししませんか。

場所等の、お店についての詳しい情報は、「コーヒーHAMASAKI」
で検索してください。

2015年2月8日日曜日

ありがとうございました

昨日の学習会は6名の参加で、攻撃的な行動をしてしまう子どもとの関わりを中心に、事例検討を行いました。教育社会学者の杉尾先生にも参加していただいたことで、議論が深まり、新たな視点が加わりました。杉尾先生には、今後も参加していただくことになりました。
次回の学習会は、3月7日(土)です。場所は未定です。ゲストとして、宮崎日日新聞の新坂英伸さんをお呼びして議論に参加していただきます。新坂英伸さんは、子どもの貧困に関する連載「誰も知らない〜みやざき子どもの貧困」を担当された方です。
この学習会は、校種を問わず、宮崎県内の教職員とSSW(スクールソーシャルワーカー)で作っている会なので、教職員かSSWの方ならどなたでも参加できます。お気軽に参加してください。お待ちしております。

2015年2月5日木曜日

アタッチメントNO.11

前回に続き、玉井邦夫 著「学校現場で役立つ 子ども虐待対応の手引き」(明石書店)
「第2部 虐待を防止するための方法 第6章 子どもへの対応」に、虐待を受けた子どもへの具体的な関わりについて書かれていますので、紹介します。

2 安全であること
  学校が子どもにとって安全なところであることを伝えるためには、「失敗や自己表出に対する安心感や安全感を子どもが感じることができる雰囲気が教室の中に必要」です。「安心感や安全感を子どもが感じることができる雰囲気」を作るにはユーモアも大切ですが、気を付けなければなりません。それは、虐待を受けた子どもの自己評価はきわめて低められていることを考える必要があるからです。「馬鹿にする」「笑いものにする」といったパターンの関わりはユーモアにはならず、これらのパターンがユーモアとして受け止められるには、相当の自己信頼が必要である、と書かれています。また、こうした雰囲気作りは、「子どもへの個別的な対応というよりも学級運営の基本的な視点」とあります。
次に、「安心感や安全感」は「子どもがこれから起こることに対して見通しをもつことができることによっても支えられる」、「子どもへの対応方針が教職員集団で統一されている」ことが肝要だと述べられています。
 最後に、「行動化」について書かれています。「行動化」とは、虐待を受けた子どもがしばしば起こす集団生活の中でのトラブルのことです。これは、子どもが自分の感情をもてあましたときに、行動にして表すことを意味しています。「行動化」への対応としては、①学校が安全であることを伝えるチャンスであると考える②懲罰を受けることが「責任をとる」ことではなく、「どうすればよかったのかを考えることが『責任をとる』である」ということを伝える、とあります。その際、「問題行動」に対して、「どうして」と問いつめるよりも、「こんなふうに感じているように見えた」「誰々のこの言葉にカッときたように見えた」と指摘する方が有効である、とあります。

2015年2月4日水曜日

杉尾先生の紹介

7日(土)は学習会です。今月も事例検討を行います。ゲストとして、兵庫教育大学名誉教授 杉尾宏先生(教育社会学)に参加していただきます。杉尾先生が書かれた本の中から、私が所持している本を紹介します。

 「教師の日常生活  ■心やさしきストラテジー教師に捧ぐ」北大路書房(1988年初版)

 「教育コミュニケーション論 『関わり』から教育を問い直す」北大路書房(2011年初版)

たくさんの参加をお待ちしております。
  

 4月の研究会のご案内です。 日時:4月13日(土)16時から18時 場所:アオシマコーヒー 住所:宮崎市青島2丁目6-5 青島BAR 2F 電話:080-5602-2788 皆さん、お気軽にお越しください。